んがっ、落ちてるー。令嬢が。そこら辺に。
「あのー。名のある令嬢とお見受けするのですが」
だって、いい服着てるし。盗賊とかに会わなくて良かったね。
「ね?隣国に行けば会えたでしょ?」
「フィル!今はそういう問題じゃないだろ?」
令嬢はパクパク口を開くのみだ。
「あ、もしかして言葉が発せられない?筆談で。大丈夫、僕らは3か国はマスターしてるから」
「なんだー。こっちの言葉も大丈夫なんだ、安心」
俺は、令嬢が無事で安心だが。この令嬢……奔放といえば良いが、口悪くないか?
「俺らは隣国から来た。俺の母上に尻を叩かれるような形で。ちょっと稼いで来いと」
「うーん、今の為替レートでそれはナイわね」
この令嬢、頭が切れるようだ。
「こっちから出稼ぎに行くのはわかるけど、そっちからってのはナイナイ」
令嬢が嘲笑を浮かべて、顔を扇ぐような仕草をするし。
「おい、フィルはわかってたのか?」
「えー、だから令嬢との出会いって言ったんだよー」
俺だけか……
「あ、そういえば。俺はシェイク。隣国で伯爵家の嫡男をしてる」
「それって職業?」
痛いところをつくなぁ。
「で、こっちがフィル。俺の弟みたいなもんだ」
「弟の方が頭がいいみたいね。で、私も伯爵家の者よ」
……令嬢だろ?訳ありか?
「えーと、名前は?」
「私の名前……うーん、レーカとでも呼んでちょうだい」
(この令嬢、多分王家の令嬢だろうけどシェノクには黙っておこう)